今月のワンポイントアドバイス2004年版
   2004年1月 「メリが良く出る」
   2004年2月 「どうやって息を出すか」
   2004年3月 「どうやって息を出すか その2」
   2004年4月 「すぐ吸うな、すぐ吹くな」
   2004年5月 「メリが高いと、、、、」
   2004年6月 「顎であわせるな」
   2004年7月 「究極のメリの方法」
   2004年8月 「残りの30パーセント」
   2004年9月 「ふれ幅と傾向」
   2004年10月 「イが低い」
   2004年11月 「その先まで」
   2004年12月 「メリの幅さまざま」

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2004年 1月 「メリが良く出る」

 年の初めにちょっと大胆な仮説を申し上げます。でもやっぱりメリに関してなのですが。。。
 メリの時に歌口部分の開口面積を増減させることで音程のコントロールが可能であることは何度かお話しました。
 唇で(特に下唇で)開口面積を閉じることで音程は下がります。また開ければ音程は上がります。結果として尺八に対する顔の角度は変わりますが、この角度を変えることで音程が変わるわけではありません。
 この「結果として変わる角度」が息の出口に悪影響を及ぼすことが判ってきました。つまり、メッた時に下唇は相対的に尺八から押し上げられる形になるので息の出口が下から押しつぶされてしまうのです。この結果、メリ音を出す時の息は細くなってしまい、小さな音しか出なくなってしまうのです。
 歌口部分の開口面積を減らすために、息の出口がつぶされない方法を使えばこの問題は解決します。
 それは、尺八を下方向にスライドさせて、開口面積を減らすのです。実際はスライドさせることは難しいのですが、スライドさせるという発想の動き方は、角度を変えるという発想からの動きに比べ小さな動きで、音程をコントロールできるでしょう。
 実際の要領としては、四孔をふさいでいる人差し指で尺八を押し下げるようにするのです。そうすることで顎が前方の45度の方向から喉の方向に向かって押し下げられる動きになります。実際には顔の角度が変わりますが、下唇の下部では肉の柔らかさによって相対的にその部分で尺八の上部開口部を閉じる動きになります。
 よくわからなかったら国際尺八研修館の講習会へどうぞ。 
 やっぱり、今年もメリです。

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2004年2月 「どうやって息を出すか」

 「どうやって息を出すか」というちょっと大変なテーマに取り組んでみます。
 ただし、筆者も確信の持てていない事が多いので、 御意見のあるかた是非お聞かせ下さい。

 いろいろな方が、尺八を吹く時の腹筋、あるいはお腹の辺りの動きについて質問されます。
 実際は「いい音で」、「安定して」、「ごく大きい音からごく小さい音まで」、「立ち上がりが鋭くでも、ゆるやかにも」、まだあるかも知れませんが、とにかく「音」が自由になればいい。
 しかし「音」だけを基準にしていると難しい事でも、「フォーム」を修正する事でいい状態が速く身につく事があります。特に「安定して」、「ごく小さい音まで」には息の出し方が大きくかかわっているようです。
 「安定して」息を出して行くためにはお腹の辺りが息を出すにつれてやや「せり出していく」ような状態が必要の様に思います。息を吸う時もお腹の辺りがせり出すのですが、この2つは「せり出す」場所が違う様です。吸う時は「ろっ骨の下辺り」、息を吐き出して行く時は「その更に下辺り」のようです。

 この方法で吐き出す要領ですが、低い声で「おっ、おっ」と言ってみて下さい。下腹の辺りが膨らみませんか。だんだんとゆっくり「おーーっ、おーーっ」と言ってみて下さい。また、「おーーっ」と言いながらほんの少し前屈みになるようなつもりで息を出してみて下さい。この方法で尺八を鳴らしてみて下さい。安定感は増してるはずなんですが。。。。御意見お待ちしています。

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2004年3月 「どうやって息を出すか その2」

 前回「どうやって息を出すか」というちょっと大変なテーマについてお話しました。
 音が良ければどんな吹き方でもいいんです。それが大前提です。
 前回と同じような事なのですが、わりと分りやすい表現を見つけましたので、それをお話しようと思います。
 ろうそくを吹き消す事を想像して下さい。そして実際にそのように息を出してみて下さい。大きめのろうそくが勢い良く燃えているのを消す事を想像していただくとより良いかと思います。
 自然と腹筋を充分に使い、また唇を締めて流速の早い息を出していると思います。この時の腹筋の使い方がとてもいいのです。
 ただし、唇をかなり締めていると思います。これは良い音を出す上でとても具合の悪い事です。
 どうするかというと、、、、まず、大きく口を開けてその状態で、ろうそくを吹き消してみて下さい。
 ほとんど腹筋のみで息の流れが作られていると思います。次に口は開けたまま、すこしだけゆっくりろそくを吹いてみて下さい。炎が消えなくてもかまいません。この状態でも腹筋中心の息のコントロールが出来て行ると思います。
 次に、ちょっとだけ上下の唇を合わせて下さい。この状態でさっきの少しゆっくりの息を出しててみて下さい。この腹筋と唇の兼ね合いが尺八を吹く上でとてもいいのです。

 でも尺八を吹こうとしたとたんに腹筋に力が入らなくなって、唇に力が入っちゃうんです!という方、国際尺八研修館の講習会においでくださいませ。  

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2004年4月 「すぐ吸うな、すぐ吹くな」

 2000年の10月に「吐く息のコントロール」というテーマでお話したことがあります。
 内容的には似ている所もあるのですが、ちょっと違う面からこのことにアプローチしてみたいと思います。

 本曲では「いい間」がとても大事です。ある時は「伸びている音の長さ」をさして「いい間」ということもあります。また、フレーズから次のフレーズへの音の無い「間」にも、もちろん良い悪いがあります。そしてフレーズから次のフレーズへの「間」ではほとんどの場合、息を吸います。

 あるフレーズが、いつ終わるかということを考えてみて下さい。
 音の終わりがきれいに消えて行くと、音が無くなってからもまだその余韻が続いているのです。その余韻の中で息を吸ってしまうと、その動きでせっかくの余韻が壊されてしまいます。
 きれいに終われて余韻があるときほど気をつけて息を吸わなければいけません。単純に言うと息が無くなったからといってすぐに息を吸わず、ちょっとの間がまんするのです。

 これと逆の事が吹き始めにあります。息を吸ってすぐに吹き始めてしまう方をよく見かけますが、これは音の始まりが息を吸うという動作に制約を受けている事になるのです。フレーズが必要としている時に音が出なければいけません。ですから、息を吸っても一旦、間がある様にするとフレーズから次のフレーズへの繋がりがきれいになっていきます。

 呼吸をより良くコントロールする事が、本曲をより良くします。
本曲で御自分の演奏が何となく物足りない方、音のない所を「聴いて」見て下さい。      

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2004年5月 「メリが高いと、、、、」

 1つのフレーズを吹くのに息が足りない、ということをよく聞きます。確かに息が足りないこともあるでしょう。ですが、不思議に思われるかもしれませんが、メリが高くて息が足りなくなると言うことがあるのです。

 また、ロ吹きでは良く鳴っているのに、曲を吹くと鳴りが悪い、と言うこともよく起こる現象です。これもメリが高いがために起きている場合があるのをご存知でしょうか。

 ごく初心者の方で、メリが高くてもあまり事の重要性がおわかりになっていないと、例えば高めのツのメリに対して次に来るレをいつもの吹き方で吹いてしまいます。(このレのみを測定すれば正しいのですが、その前の音に対しては相対的に低いということになります。)
 ところが、ある程度音程のコントロールがわかってきた方が、高めのツのメリを出してしまった場合に、次に来るレは高めのツのメリに対してつじつまが合うように、(ツのメリとレの音程差を確保するために)カリ気味に吹いてしまうのです。
 この、最善のポイントからはずれて、カリ過ぎているポイントで吹くということが、始めにお話ししたことの原因になっているのです。

 ご自分の最善のポジションでいつでも吹けるようにするためには、メリが高くてはいけません。
 正しいメリを出すことがすべての音色を良くし、息を長く持たせることにつながっているのです。  

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2004年6月 「顎であわせるな」

 古典では余り無い事ですが、現代曲などでは曲の中で尺八の長さを変えるために、尺八を持ち替える事があります。
 曲の中で替えなくても、続けて演奏する曲の尺八を替えなくてはならないこともままあります。
 こんな時に持ち替えたとたんに、尺八が鳴らなくなってしまうという経験をよく聞きます。

 この大きな原因は、当たり前ですが、尺八が違うと言う事です。尺八が代わったったために顎の当たりが変わってしまう事が直接の大きな要因です。

 普段フルートを吹いている方に尺八の指導をした時に、歌口の側でなくて、顎の部分で最善の位置を決めているのを見かけたことがあります。この方はもちろんフルートは音が出ないなんて事はないのに、尺八の音はなかなか出ませんでした。顎ではなく歌口の側で位置を決めると良いと言うアドバイスをしたとたんに音が出ました。
 フルートの息を吹き込む所の穴は尺八の上端の穴よりずっと小さいので、顎で位置を決めると尺八の歌口は最善の位置よりも上(前)過ぎてしまうのです。

 これに似たような事が尺八の持ち替えでもおきています。
 息の出口が正しく歌口に対しているかをチェックしなければいけません。場合によっては顎では違和感を感じることになるかもしれません。この違和感を我慢できないと持ち替えは難しいです。どうしてもこの違和感を我慢できないときは違和感が無くなる様に尺八を加工しなければいけません。
(筆者、柿堺の全尺八は、ほぼ同じ感じになる様に自分で加工してあります。)

 もう一つ。無駄な力の抜けた良い吹き方は尺八が代わった事に対する影響が少ないようです。
 力が入っていて、狭い息の出口で吹いている方は影響を大きく受けます。  

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2004年7月 「究極のメリの方法」

 今月は「究極のメリの方法」です。実は何度もこのコーナーでお話した事なのですが、なかなか一言で表す良い表現がありませんでした。ついにその表現を見つけました。

 以前からメリは、尺八の上部の開口部分を閉じる事で実現出来ると言う事をお話しています。この開孔面積を効率良く変えられさえすれば良いのです。理屈は簡単です。

 上側の手の人さし指(四孔を押さえている指)を押し下げる。また、下側の手の親指で尺八を押し上げる。という動きが効率良く行けば上手く上部開孔面積をコントロールできます。

 ところが、正しい動きを伝えてもなかなか体はそのように動きません。ここで必要なのがイメージです。 良いイメージを持つ事で体は効率良く動いてくれる事が往々にしてあります。

 大事なのはメリのための尺八の動きのイメージを言葉で表すということです。

 それは「歌口が下の歯の根元に向かって移動する」です。

 これは単純な尺八と頭との角度の変化だけでは無くて、尺八の平行(あるいは回転)移動を含んでいます。
 この動きでメリは確実に落ちます。

 それでも落ちない人もいるかもしれません。それは、標準の吹き方が初めからメリにシフトしているからです。

 もしかすると、メリの技術よりも普段の吹き方をややカリぎみにする事の方がむつかしいかもしれません。    

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2004年8月 「残りの30パーセント」

 満足のいく良い音を出すと言う事は、アマチュアもプロも共通の課題だと思います。そのために唇の状態はどうしたら良いかとか、口の中は、舌の位置は、等々いろいろ考えます。
 言い方を変えると「フォームからのアプローチ」といって良いかと思います。
 修正し易い、理解し易いといった面でフォームからのアプローチは効率の良い方法だと思います。

 しかし、これで100パーセントのことが可能かというとそれは違います。フォームからのアプローチではおそらく60〜70パーセントしか実現できないのではないか。残りの30〜40パーセントは別の方法をとらないと埋める事ができないのではないかと思います。非常に抽象的な表現で申し訳ないのですが、このように感じています。

 で、問題は残りの30〜40パーセントです。
 横山勝也館長は若い時に夢の中でとても素晴らしい音を聴いたそうです。「妙音」という表現をつかわれますが、それはそれは素晴らしい音だったそうです。記憶の中の事ですから、追っても追ってもとどかなほどその素晴らしさは膨らんで行ったろうと思います。
 この「妙音」を追い続ける事で、実現しようとすることで、「残りの30〜40パーセント」が埋まっていったのでは無いかと思います。

 つまり、なにか理想の、あるいは、あこがれの、「音の記憶」が必要なのだと思います。
 実現したい事があって始めてそれに向かって進んでいけるわけですから、何か理想の音を見つけて下さい。
 これは必ずしも尺八の音で無くてもいいと思います。イメージを持っていれば、そのイメージを尺八で実現する方向へ向かって行く事が出来ます。  

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2004年9月 「ふれ幅と傾向」

 またまた音程の話です。
 今月のタイトルの一つ「ふれ幅」というのは「誤差」といいかえてもかまいません。つまり、正しい音程からの「ずれ」です。
 わざわざ「ふれ幅」ということばを使ったのは、この「幅」がその時々に応じて変わるからです。これは多くの方が思っている、「音程の悪さ」ということです。
 ひたすら練習でこの「幅」を小さくしなくてはなりません。

 ところが実は、「ふれ幅」以外に「傾向」がある事をしっかり認識されると、演奏技術は格段に良くなります。
 「傾向」というのは「ツのメリからスタートすると正しい音程を出し易いが、レからツのメリに行くと高くなり易い」というように「ふれ幅」が片寄っている事です。正しい音程を中心に「ふれ」ているのは単純ですが、高めの音程を中心に「ふれ」ている時は2つの要素が混じっています。

 「傾向」を理解してそれを修正するとより進歩が早まります。  

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2004年10月 「イが低い」

 またまた音程の話です。
 リ(またはヒ)から五孔(裏孔)を開ける「イ」という指使いがあります。「五のヒ」という言い方で「ヒ」の中に「五」を書く表記を使う事もあります。甲にも乙にもあります。

 乙のイは甲のロと同律のはずですが、これが低めになってしまう場合があります。また甲のイは「五のハ」あるいは「大甲のロ」と同律にならなければなりません。

 ほとんどの場合、原因ははっきりしています。
 それは五孔から離した親指が音程に影響する範囲に残っているのです。五孔を開けた時にも親指の上部を尺八に付けたままにしている場合にこうなります。イの音程を作る時には五孔から親指を音程に影響のないところまで離さなくてはいけません。

 どうしても親指を離すと尺八の保持が不安定になってしまう場合は持ち方が良く無いと言う事です。五孔の連続打ちであっても自由にならなければいけません。親指の一部が尺八に常に接してい無ければならないのは不自由なことです。  

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2004年11月 「その先まで」

 伸ばした音の終わりの部分がその音の印象を決めてしまうことがあります。
 つまり、長く伸ばしてきれいに消えて行くべきなのに、音程が不安定になる・音色が極端に変わってしまう・音量の変化がスムースに行かない、などの現象が起きます。
 これをなんとか解決したいのですがなかなかうまくいかないものです。

 あるとき、空手の達人の話を聞きました。
 よく野球のバットを臑で蹴って折るパフォーマンスがありますが、このことに付いてです。その主旨は、現実にバットがある場所よりも遠くにバットがあるようにイメージを作る、ということでした。これは実際のバットを蹴ろうとすると、どうしてもその前に臑のスピードが落ちてしまうのを防ぐイメージの持ち方のようです。

 これを使いましょう。実際に音が終わる瞬間よりももっと先まで音が続いているイメージを持ってみて下さい。
 この方法で音の終わりの緊張感は段違いになる、、、ことを期待しています。  

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2004年12月 「メリの幅さまざま」

 またまたメリの話です。
 古典本曲で非常によく使われるメリに、ウ(チのめり)をめってレと同律を出すものと、ツのメリをめってロと同律を出すもの、リのメリ(ヒのメリ)をめってチと同律を出すものがあります。
 メリを更にめるので、二段メリというような呼び方をする場合もあります。
 難易度が高く、なかなか完璧にコントロールするのは難しい技法ですが、同時にほんんとうの尺八の味わいのある重要な手法です。

 二段目のメリを出すのには顎の部分のメリと同時に手孔も多少閉じる方向に動かします。ただし、あくまでも主体は顎のメリです。

 これらのメリをコントロールする場合、ウをめってレと同律を出す場合のメリの下げ幅と、ロと同律をツのメリをめって出すときの下げ幅はどちらも半音です。ところが同じ半音でもそのメル深さの感覚は同じではありません。
 例えば、ウの時は1cmで半音変化するのに対して、ツのメリの時は5mmで半音変わってしまうというようなことです。(この距離はあくまでもイメージ的な表現です。顎や指を5mm動かすということではありません。)
 5mmでウが半音下がると思うとレと同律にならないままですし、ツのメリに対して1cm動かしてしまうと、音がきえてしまったりとトラブルになります。
 ですから、それぞれのメリについてコントロールの幅が違っているということを意識して二段メリを練習してみてください。

 でも本当は考えながら演奏するのはほとんど不可能ですから、考えなくても正しい動きができるように練習練習です!!  

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